第296章

「望月社長、何かご命令でしょうか」

 電話が繋がるや否や、受話器の向こうの男は恭しく切り出した。

「山下那美という女を徹底的に洗え。今、俺の家でククの世話をしている女だ」

「奴の素性を、過去から現在に至るまで全てだ。塵一つ残さず調べ上げろ」

 相手は即座に了承の意を示した。

「御意。望月社長ご安心を、直ちに着手いたします。……ただ」

 男は少しためらいがちに口を挟んだ。

「その山下ですが、お嬢様の世話を甲斐甲斐しく焼いていると聞き及んでおります。突然の身辺調査とは、もしや……」

「単なる疑念だ」

 望月琛は冷徹に相手の言葉を遮った。

「現時点では、あの女が関与しているとい...

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